第3回「ストレス生活のなかのバランス」

どのような状況でも、生活の仕方には工夫が大切です。ところが自分の思い通りにいかないのが世の中です。好きなように過ごす、気ままな生活がしてみたい。そうすればストレスなど感じないだろうと思われるかもしれません。ところがそれは私たちの健康生活にとってはかえって危険です。思い通りにならないからこそ、やり遂げた時の達成感も得られます。ストレス状況で何とか自分なりの生活をしようとするのは、生きる上での基本的なモチベーション(やる気)です。そのためにも緊張とリラクセーションのバランスやリズムが必要です。それは固定的に決めてしまうものではなく、動的なものであるべきです。

ワークライフバランス

 

 ここ数年、よく耳にする言葉です。一日が24時間ですから、ひとつの事に多くの時間を割けば残りは少なくなります。生活時間(食事や洗面などに必要な時間)が2~3時間、睡眠6~7時間とすれば、自由に使える時間は限られます。だからといって単に仕事をする時間を短くしても、ワークライフバランスにはなりません。自由になった時間をどのように使うかわからないと、結局は仕事に追われることを選んでしまうかもしれません。ですから、労働時間を見直して短くすればいい、そのための制度をつくればいいと言うだけではバランスは取れないでしょう。

 また、長いスパン(時間の幅)で考えれば、働きたいときにたっぷり働き、その分たっぷり休むということもあっていいでしょう。ただ問題なのは、それで健康生活を楽しめればいいのですが、偏っているとどうしても無理が出ます。その時の状況に合わせて柔軟に時間の過ごし方を選択できるというのが、もっとも望ましいワークライフバランスと言えるのではないでしょうか。たった一度の人生ですから、充実した人生を送るために普段のエネルギー配分を柔軟にすることを大切にしたいですね。

役割のバランス

 

 とはいっても時間のマネジメントは難しいものです。時間の過ごし方         のヒントは「役割」です。ひとつの役割だけでは飽きてしまいます。いまこの部分を読んでいただいている方々も、読者の役割だけでは嫌になってしまいます。書く側になってみたい、あるいはまったく関係なく、お菓子を「食べる」役もあり得るでしょう。役割とは、責任のある立場や仕事の分担ということではありません。むしろ「分担」などというから嫌がられるのがオチで、ストレスも高くなってしまいます。

 役者になりましょう。職場では「働き者」、プライベートでは「怠け者」。あるいは家では料理人や洗濯屋さん、などなど。せっかくの人生ですから普段できない役をやってみるのは人生の幅を広げてくれます。もしかしたらそれまで気付かなかった、自分の思わぬ隠れた才能を発見するかもしれません。退職前の役にこだわって、その舞台を失ってもぬけの殻のようになってしまうことも避けられるでしょう。

時間の速さ

 

 時間の過ごし方には楽しい時間もあれば、嫌な時間もあります。どちらかというと前者は早く流れていくように感じます。充実した時間ほど中身は濃いのに、アッという間といったところです。このこともバランスで考えれば、なんでもアッという間では、気ぜわしいかもしれません。それに、せっかくの人生がアッという間に過ぎてしまったのではつまりません。いつになったら終わるのだろう(人生のことではありませんよ!)とかつまらない講義などでは、学生が感じる時間の過ぎ方は長そうです。

  ただし、好きなことをやっているのも続けばいつかは飽きてしまいます。嫌なことも辛抱強く時間が過ぎるのを耐えなさい、と言うつもりはありません。筆者自身もそれは嫌です。のんびりとまったりした時間を過ごすということを日常生活の中に時々入れてみるのもいいです。携帯やスマホでメールや情報を確認したりしているのは、スピードを加速した過ごし方かもしれません。ヒマだからといっても、多くの場合ゲームなどして、結局は自分で時間に追われる状況に陥っています。これでは自分からストレスを抱えてしまっていますね。ほどほどに。