第6回「休み方から職場のメンタルヘルスを考える」

1.休みについての考え方

 

 休みを軽視する人がいます。いい仕事をするには、いい休みが必要です。ところがほとんどの場合、「いかに休むか」はあまり考えないようです。「休みに何をしようか」ということはよくありますが、それも「仕事が終わったら…」ぐらいの考えです。「とにかく休めれば…」とか「早く休みがこないかなぁ」といったところでしょう。それでは、せっかくの休みも気がついたら終わっていた、などということの繰り返しです。

 お仕事など就業時間以外の時間の過ごし方についてしっかり考えることは大切なことです。仕事の後の休みでは、その仕事でできなかったことを考えるよりも、できたことを考えた方が休みの効果も良いという研究結果があります。

2.いつも休みたがっている…

 

 休みの話をしたり休みたがったりしていると、怠けているとかぐうたらだとか言われます。筆者もよく言われています。

 日本では、諸外国ほど長期休暇という制度はありません。確かに休日や祝日は世界一多いくらいなのですが、休みの使い方を気にするほど休めないのが実情のようです。それに「休んでなんかいられない」「嫌だけれどやらなければ」という状況は、仕事中毒そのもので一生懸命があだになって身体もこころも病んでしまいます。逆に仕事が楽しくて仕方がないというのは、近年ワークエンゲージメントという視点から、メンタルヘルスにつながる良い状態だと言われています。それでも、休まないで働いていたら疲弊してしまい、仕事だって楽しくなくなります。

 いつも休みたがっているようであれば、かなりの不適応状態です。それは良い状態を維持するための素直な要求のあらわれなのかもしれません。 

3.長期休暇よりも、ちょっとしたよい休みを

 

 長期休暇が良いかどうかは人それぞれで文化によっても違うでしょう。ある長期休暇の研究では(もちろん日本以外です)、長期休暇に入って急激にストレス状態は改善するという報告があります。でも、その休暇が終わってしばらくすると、数週間でまたもとの状態に戻ってしまうという結果でした。

 であれば、こまめに定期的な休みや週末の休みなどをうまく活用する方が得策かもしれません。フリッツとゾーネンターク(Fritz & Sonnentag, 2005)は、週末に職場以外の友人や知人に会ったりする社会的活動をすると、休み明けの健康やパフォーマンスが上昇することを報告しています。

 こうした週末の休みの効果が、長期的な身体の健康にも影響を及ぼすことがフィンランドの25年にわたる研究でも確認されています。また、週末に十分休息がとれないと心臓疾患のリスクが高まるようです。

4.休みは、誰とどのように過ごすか

 

 注意しなければならないのは、週末に仕事以外のストレスを経験する場合です。せっかくの休みに夫婦喧嘩をたっぷりしたり、友人や恋人とトラブルになったりすると、当然ストレスは増大しパフォーマンスも低下します。

 どうせなら面白い人と一緒にいるのが良いですね。ある研究では、女性は笑わせてくれる男性を好む傾向が明らかになりました。マーティンという研究者たちも男女とも「ユーモアのセンスのある人」を求めることを確認しています。男性は「自分のジョークを笑ってくれる人」、女性は「面白いことを言って笑わせてくれる人」というように出会いの時は「笑い」「面白い」ことがきっかけとなるようです。社会的なつながりをつくる上で大切なことです。でも、度が過ぎたり、いつも同じパターンが続いているとかえって逆効果になることもあるようです。

 なお面白いことでも、時と場合によりますね。仕事と遊び、勤めと休み、切り分けられるコントロール感が必要です。舞台の役者になったつもりで、演じることやまねてみることがよいでしょう。ある研究でも、人生の危機にジョークを使うのは禁物で、離婚や別居率が高い傾向があるようです。それに、妻のジョークが夫の心拍数を減らすこともあるとか。そのまま止まってしまったら怖いですね。

 

 それに、無理に誰かといることもありません。自分が面白い人間になってみること、あるいは一人でも何か楽しく過ごせるようにしてみることも大切でしょう。でも、ひとりでニヤニヤしていたら、ちょっと怪しくなるかも…。ほどほどに。