第2回「ストレスに負けない“たくましさ”」

1 あなたはどちらのタイプ?

 

 突然ですが、物騒な話題で失礼します。カラシニコフ(AK-47)という銃をご存知でしょうか。カラシニコフという人がつくった自動小銃です。TVのニュースなどでも、途上国の戦闘場面で一般人のような人が持っているのをよく見ます。精度はいまいちですが、扱いやすく砂嵐や泥水の中でも使え、故障も少ないようです。これに対してアメリカ軍などの精鋭部隊が常備している自動小銃は、チリひとつ入らないように無駄をなくした精密精巧なもののようです(M-16など)。その分、後者は、ちょっとした泥や汚れで故障したり、不具合が生じたりするらしいです。

 これを人間に置き換えて考えてみると、ちょっといい加減で図太い人がカラシニコフ型でしょうか。大雑把で、あまり些細なことにこだわらないようなタイプですね。ところが、みんながいい加減になってしまったら大変です。正確にきちんと仕事をする人も当然必要です。いろいろなタイプの人がいてバランスが保たれています。

 近年の働き方はちょっとしたミスも許されず、IT技術の発展とともにいつでもどこでも仕事ができる、言い換えれば仕事に追われ、すぐに反応して対処することが求められる状況です。緻密で正確な気まじめ屋さんも、カラシニコフ型の人もともに生きづらくなってしまいました。


2 たくましさの要因

 

 ストレス状況などでも頑張れる人は、どんな人なのでしょう。生まれつきなのか、訓練によって変えられるのか。いろいろな説がありますが、一つだけ紹介します。

 コバサ(Kobasa,1979)はハーディネスとして、その人のもつ柔軟さ、弾力性といった機能に着目しました。それはコミットメント(commitment)、コントロール(control)、チャレンジ(challenge)の3つの要素(3C)からなっているといいます。

 それぞれ具体的な行動やふるまい方と結びつけられます。特別なことではなく、あなたができていること(コントロール)、興味を持っていることや大事にしていること(コミットメント)、そして何かやってみよう、こんなことならできるかなということ(チャレンジ)、身の回りにちょっとくらいは見つかるのではないでしょうか。

 

 「そんなことよりストレス(の原因)が…」と思った方は、すでにストレスの虜になっていますね。虜になる前に、普段からこうした3Cを作ったり気づいたりして、具体的な事柄を大切にしていくことが、たくましさにつながる予防策のようです。

3 たくましさを損なう行動

 

 ほどほどのストレスは、自律神経を適度に刺激し、カロリー消費をすすめ、肥満解消にもなるといわれています。でも、毎日飲んでしまうと話は変わります。ストレスも大きなものより毎日のイライラの方が心身に与える影響は大きいのです。生活習慣病も同じかもしれません。

 毎晩飲んで、つまみもたくさん食べていれば太ります。生活習慣病は、物事のとらえ方や考え方など認知機能を低下させるといわれます。認知がゆがむとそれもストレスです。同じ出来事でも、ある人は否定的に考えがちで、非現実的な思い込みにとらわれていきます。この頭に浮かんだ考え・イメージ・記憶などを自動思考と呼び、気分や行動に影響を与えることが確かめられています。悩むタイプですね。実は大雑把に悪く考えるので、すべてをダークサイドの暗黒面に引きずり込みます。ぐずぐず言っている割には実際の行動には結びつかないことが多いようです。その典型が、愚痴を言いながら飲んでいるタイプでしょうか。アルコールは脂肪の代謝を落とし、かつカロリーもバカになりません。動きは鈍くなり、考えもゆがみ始めたら大変です。現実的でバランスのとれた考え方が大切です。それは具体的な行動をもとに、ものごとを確認していく過程でもあります。

●お酒について

 

 飲酒量が多くなるのもストレス源です。先日発表になった厚労省の報告では、成人の4・8%がギャンブル依存、4・0%がIT依存、1・0%がアルコール依存という推計だったそうです()。買い物依存や薬物依存、ついでに他者依存などというのもあります。

 ストレス解消のつもりが、ストレスを増やし生活を破壊してしまう危険性を持っています。

 なお、落ち込んでいる人をお酒には誘わないでください。「今度、うまい酒でも飲もうな」くらいがいいでしょう。お互いがいい状態でおいしいお酒が飲めればストレス社会も乗り切れそうです。

 さて書き上げたところで、一杯いきましょうか…。これが危ない。今日ぐらい肝臓を休めるか。これができたら依存症にはならないでしょう。

 

●愚痴はストレス解消にはならない

 

 精神的不健康を説明する(悪い方にすすめる)要因には、「我慢・あきらめ」「愚痴」が見られます()。労働時間や眠りについてはまたの機会に取り上げます。